静か、何という静かだ。
今夜は新月、そよ風は木の枝を揺らし、空気中に血の匂いが漂っている。
数時間前、ここは要塞だった。いまは隣国の兵士に壊されてしまった。
僕の名は乙、母はこの字は一筆で書けるから覚えやすいと教えてくれた。
我々はWave様軍の兵士。
この世界では殿様は何百人もいる。農業ばっかりやっている殿様もいれば、毎日飲んで遊んで土地が荒れ果てた殿様もいる。
Wave様は違う、戦争好きでとても厳しい方、日夜我々に仕事をやらせている。
城壁の強化、兵営の拡張、そしてこのように野外の要塞を建てるなど。
彼の口癖は、「今汗を流せば、将来血が流されずに済む」。
僕にとっては、誰が勝っても一緒、早く村に帰って年頃の女子と結婚したいだけ。
てもWave様の命令は絶対だ。
気に食わない将軍はあっという間に消される。
時々殿の指が空に現れて、その時、指さした方向に突進しなければならない。
隣国の兵士に聞いたことがあるが、彼らの殿様も同じ。
時には空に何十本の指が現れ、その時は地上に血の海ができてしまう。
今日昼の戦いで殿が疲れって、夜は珍しく寝てしまった。
我々も一息つくかと思ったが、敵騎兵隊が現れた。
最初は100名しかない、高順将軍は笑った、この程度の兵はわが軍の前に一瞬で消える。
その通り、一瞬で消えた。
龐統軍師はそう思ってないようで、あれは偵察だ、次は敵本体が来るぞと予言した。
この世界では、龐統軍師は何百人もいる。
同じ龐統軍師でも、まだ経験を積んでない赤ん坊のような龐統軍師もいれば、カンストと呼ばれるすごい方もいる。
我らの龐統軍師はまだそこまで到達していないようで、「いつかわしもカンストにするぞ」と軍師はよく言うが、僕にとっては意味がわからないことでどうでも良かった。
Wave様の命令は絶対だから、命令がないと、誰も勝手に動いてはならない。
龐統軍師の予言通り、すぐ次に敵の騎兵隊大群が押し寄せてきた。目の前でみんなバタバタ倒れていく。
軍師は最後まで戦ったが、要塞壊されたから仕方なく本城へ撤退。
この世界では、将軍や軍師たちは死んでも数分経つと復活する。兵士は石や鉄からいくらでも作れる。
先程伝令兵から、殿は関所前に要塞作る命令を下した。
これから本城戻って新しい部隊に編入されるか。
二つの州も歩かなきゃならない、遠い道なりだね。
わが故郷にいつ戻れるかな…